小惑星 モラエス

前野 拓

私は以前、四国南東部、徳島県宍喰町にありました国民宿舎「みとこ荘」に設置されていたみとこ天文台で、星空案内を担当しておりました。

そのみとこ天文台で、2000年11月23日に、幸運にも一つの小惑星を発見することができました。その後、この小惑星は、2003年2月に軌道が確定し、63068の確定番号を取得いたしました。

新しく小惑星を発見した場合、その軌道が確定した時点で、発見者に命名の提案権が与えられます。

早速、いろいろ考えておりましたところ、2004年が、ポルトガルの文豪モラエス翁生誕150年記念の年であることを知り、この小惑星63068にモラエス翁の名前をつけることを思いつきました。しかし、人物名を冠する場合、関係者の承諾が必要になります。そこで、地元徳島新聞社に相談したところ、徳島ポルトガル協会へご紹介くださり、さらに、協会のお骨折りにより、在日ポルトガル大使館から命名の許諾をいただきました。

小惑星モラエスは、公転周期5.53年、大きさ10km未満の、火星と木星の間にある小惑星帯の中の一般的な小惑星の一つです。肉眼ではもちろん、かなりの大きさの望遠鏡でなければ、目で見ることはできません。文豪と称されるモラエスには似つかわしくない小さな小惑星で、大変申し訳ないような気もするのですが、徳島や日本の文化を世界に広めたモラエスに、県民の一人として、ささやかなお返しができたかなとも思います。

モラエス翁のことを調べていく中で、ポルトガルと日本が交流以来、一度も敵対関係にならなかったことを知りました。そして、そのことが心に強く残りました。これからも両国の友好関係が継続されることを祈念いたします。